土曜日、19人のAI社員が動いた1日のログを全公開する
2026年3月7日。土曜日。
この日、TomorrowProofでは7回の経営会議が行われ、25本のドキュメントが生まれ、3,500行以上のテキストが書かれた。株主向け説明資料、法務文書、プロダクト戦略、コンテンツ、ダッシュボードのコード。
社員数は19名。ただし全員AI。人間は1人。代表の私だけだ。
この記事は、その1日のログをそのまま公開するものだ。何が起きたのか。何人分の仕事が動いたのか。数字で全て見せる。
09:00 — 始業。最初の会議が始まる
朝9時。Discordに通知が飛ぶ。CEO Agentが今日の議題を整理している。
最初の議題は「来週の株主説明会に向けた資料の策定」。7体のエージェントが招集された。
Council #4: 株主説明会資料策定
- 参加: CEO / CFO / Tax / Sales / Marketing / Planner / Dev
- 議題: 事業概要・財務・売上見通しの数値確定
CFO Agentが月次経費を構造化する。固定費・変動費・人件費を項目別に分解。
Tax Agentが節税の観点から口を挟む。「開発投資期間の費用は繰延資産として計上可能。初年度赤字は翌期以降の黒字と相殺できる」。
Sales Agentは強気だ。「リストは揃っている。Q2から売上が立つ」。CFO Agentが即座に反論する。「転換率を現実的に見積もるべきだ。楽観と保守の両方を出せ」。
この対立がCouncilの価値だ。楽観と慎重の間に、現実的な数字が浮かび上がる。
結論: 保守・標準・楽観の3シナリオを策定。標準シナリオをベースに資料作成。
所要時間: 約15分。
普通の会社なら: 経営企画部2名がExcelで3日かけてドラフト → 各部門にヒアリング1週間 → 修正2日 → 役員レビュー → 修正。合計2-3週間。
09:30 — 株主説明資料、1,067行が生まれる
会議の結論を受けて、Document Agentが資料の執筆を開始する。
14セクション。1,067行。数値ベースの株主説明資料が形になっていく。
| セクション | 内容 |
|---|---|
| 1-2 | エグゼクティブサマリー / 会社概要 |
| 3 | 設立からの開発投資期間の説明 |
| 4 | 事業ポートフォリオ全体像 |
| 5 | 財務状況と経費構造 |
| 6 | 事業別の売上見通し(複数シナリオ) |
| 7 | 技術資産の定量評価 |
| 8 | 顧客獲得戦略(複数チャネル×複数プラン) |
| 9 | マーケティング予算ロードマップ |
| 10 | 設備投資+事業拡張+海外支援プログラム活用 |
| 11-14 | リスク/ポジショニング/競争優位/まとめ |
各チャネルのCPA(顧客獲得単価)を最新の市場データで調査し、日本のBtoB SaaSの実態に合わせた数値を入れた。
所要時間: 約40分。
普通の会社なら: 経営企画2名 × 2週間。外部コンサルに依頼すれば¥100-300万。
10:30 — 週次振り返り。「外に出ていない」問題が発覚
Council #5: 週次全体振り返り
- 参加: CEO / Dev / Marketing / Sales / Legal / CFO / SNS / Writer / Branding(9体)
今週の成果を棚卸しした。結果は衝撃的だった。
| 区分 | 件数 |
|---|---|
| 外部公開済み | 3件(HPブログ公開、Kids AIリブランド、CARD:NOIRデモ) |
| 内部のみ | 12件(企画書、法務文書、ダッシュボード、営業リスト...) |
作ったものの80%が外に出ていない。
Marketing Agentが言い切った。「作る能力は十分ある。配信が完全に止まっている。ブログは7本あるのにnoteに1本も出していない。Xのフォロワーはゼロに近い。」
この事実の直視がこの日の転換点になった。
11:00 — 全体戦略会議。583行の実装計画
Council #6: 実装計画策定(全体戦略会議)
- 参加: CEO / CFO / Sales / Marketing / SNS / Dev / Planner / Research(8体)
この日最大の会議だ。
株主に「やります」と言った計画を、実際にどう実行するか。5チャネル並行運用を掲げているのに、稼働中のチャネルは実質ゼロ。このギャップを埋める設計を行った。
計画上の5チャネル。稼働率は全て0%。これが現実だった。
対立した論点:
Sales Agentは「営業リストがあるのにアプローチが始まっていない。まず動け」と主張した。
Dev Agentは「SNS投稿のAPI連携を先にやれば完全自動化できる。手動運用は続かない」と返した。
どちらも正しい。
CEOの決定: ハイブリッド。すぐにできることは手動で即開始。同時にDevが自動化基盤を構築する。手動は最初の橋渡し。
会議で決まったこと:
- 注力事業の絞り込み: 全事業を同時に営業するのではなく、売上に直結する事業にリソース集中
- サブエージェント7体の設計: 自律的に動くワークフロー(SNS投稿/KPI集計/営業リスト拡張/HP公開/SEO監視/財務同期/PRリリース)
- KPI設計: 週次・月次で自動計測する指標の定義
- 代表の1日を60分以内に: 自動化で段階的に短縮する計画
- 海外テック企業の支援プログラム: 複数社への申請計画
583行の会議録が生まれた。3ヶ月分の週単位ロードマップ付き。
所要時間: 約30分。
普通の会社なら: 全社戦略会議 → 各部門の実行計画策定 → 経営会議承認。合計1-2ヶ月。
12:00 — CARD:NOIR。4つの会議を連続で回す
ここからCARD:NOIR(デジタル名刺SaaS)の意思決定が加速する。4つのCouncilを連続実行した。
Council #7: LP設計方針(8体参加)
- 競合SITTEが2027年に終了確定 → 受け皿ポジションの好機
- ティザーLP(Waitlist型)9セクション構成を確定
Council #8: 名刺作成UX改善(6体参加)
- 3ステップ型ウィザード採用(基本情報→リンク→プレビュー)
- Google OAuth/ドラッグ&ドロップ → 全て却下(MVP不要)
Council #9: beta公開ローンチゲート(6体参加)
- P0ブロッカー8項目を全て洗い出し → 全解消
- CEOがVercelデプロイを承認
Council #10: 収益化戦略(7体参加)
- 段階的なリリース方式を確定(クローズドbeta → オープンbeta → 正式リリース)
- フリーミアムモデルの機能分離と価格設計
つまり、1つの新サービスについて「LP設計 → UX設計 → セキュリティ・法務チェック → 価格戦略」を一気通貫で決定した。CARD:NOIRは近日beta公開予定だ。
4つの会議を合わせた所要時間: 約45分。
普通の会社なら: LP設計(PM+デザイナー 1週間)+ UXレビュー(UXチーム 3日)+ ローンチチェック(QA+法務+セキュリティ 1週間)+ 価格設計(経営企画 1週間)。合計4-5週間。各部門の日程調整だけで1週間消える。
14:00 — 法務、コンテンツ、コードが同時に動く
午後は複数のエージェントが並列で動いた。
午後の並列処理。4つのレーンが同時進行する。
Legal Agent: Lumina Studio利用規約(169行)+ LINX利用規約(212行)を起草。特商法表記・プライバシーポリシー・AI免責事項との整合性を取りながら、2つのSaaSそれぞれの特性に合わせた条項を設計。
Writer Agent(Dev視点): ReGen/Atelierの開発ストーリーをコンテンツパッケージ化。SEOリサーチ+ブログ本文+X投稿3本+IG投稿+note派生記事の7パート構成。
Writer Agent: SITTE(競合デジタル名刺サービス)の終了を受けた代替サービス比較記事を作成。CARD:NOIRへの誘導を自然に組み込んだSEO記事。
Dev Agent: ダッシュボードにReGenとCARD:NOIRのプロジェクト管理画面を追加。7ファイルの変更。
Document Agent + Legal Agent: CARD:NOIRのPRD更新(731行差分)、LP設計書、利用規約、プライバシーポリシー、特商法表記、商標調査メモ、SEO戦略、コンテンツカレンダー。
この並列処理が、1人×AI企業の本質だ。
人間の組織では、法務は法務の仕事をしている間、ライターは待っている。エンジニアは仕様が確定するまで手が止まる。会議室の空きを調整する。誰かが休めば止まる。
AIエージェントは全員が同時に動く。待ち時間がゼロ。日程調整が不要。休まない。
17:00 — 1日の棚卸し
終業。今日生まれた成果物を数える。
本日の全成果物
| カテゴリ | 数量 | 行数 |
|---|---|---|
| Council会議録 | 7回 | 1,069行 |
| 株主説明資料 | 1本 | 1,067行 |
| コンテンツパッケージ | 2本 | 988行 |
| CARD:NOIR関連文書 | 8本 | 731行+ |
| 法務文書 | 2本 | 381行 |
| ダッシュボード(コード) | 7ファイル | — |
| スキル定義 | 4ファイル | — |
| 合計 | 約25本 | 3,500行+ |
稼働エージェント
19体中16体が稼働した。
CEO / CFO / Tax / Sales / Marketing / SNS / Dev / Planner / Research / Legal / Security / Branding / UI-UX / Writer / Visualizer / Document
普通の会社との比較
| 成果物 | 普通の会社 | TomorrowProof |
|---|---|---|
| 株主説明資料(1,067行・14セクション) | 経営企画2名 × 2週間 | 40分 |
| 経営会議7回の実施と議事録 | 各部門長7名 × 7時間 = 49人時間 | 約2時間 |
| 法務文書2本(利用規約) | 法務1名 × 1週間 | 20分 |
| PRD + LP設計 + 関連文書8本 | PM1名 × 1-2週間 | 30分 |
| コンテンツ2本(SEO記事) | ライター1名 × 3日 | 20分 |
| ダッシュボード開発(7ファイル) | エンジニア1名 × 3日 | 15分 |
| 合計 | 約10名 × 2-3週間 = 100-150人日 | 1人 × 1日(土曜日) |
圧縮率: 100-150倍。
これは誇張ではない。今日のgitログと会議録が全て証拠として残っている。
これが「1人×AI企業」のリアル
誤解してほしくないことがある。
AIが全てをやってくれるわけではない。AIは考えない。意思決定しない。責任を取らない。
私がやっているのは「何を作るか」「どの順番で」「どのエージェントに」「何を優先して」を決めることだ。将棋でいえば、駒を動かす指示を出す棋士の役割。駒が19個ある。
普通の会社との違いは3つだけだ。
1. 待ち時間がゼロ
法務と開発とマーケが同時に動く。会議室の予約も日程調整もない。
2. 引き継ぎコストがゼロ
全てのコンテキストがリポジトリに記録されている。エージェントは過去の会議録も、前回の決定事項も、他のエージェントの成果物も、全て参照できる。
3. スケールが線形
エージェントを1体追加すれば、その部門の仕事が増える。採用面接も研修も不要。スキル定義ファイル1本で「入社」する。
追記: 今日決まった「これからの自動化」
Council #6(全体戦略会議)で、サブエージェント7体の自律実行を設計した。
- content-publisher → ブログ記事を自動でHPに公開
- sns-autoposter → X/Instagram/LinkedInへの投稿を自動生成・スケジューリング
- lead-enricher → 営業リストを毎週自動拡張
- kpi-reporter → 週次KPIを自動集計してDiscordに投稿
- seo-monitor → 検索順位の変動を自動監視
- finance-sync → freeeと同期して月次PLを自動生成
- pr-writer → PR Timesのプレスリリースを下書き
現在はXアカウントを開設し、投稿コンテンツの自動生成まで完了している段階だ。来月にはAPI連携による自動投稿まで実装し、SNS運用の完全自動化を目指す。
代表の1日の作業時間を段階的に短縮していく計画だ。
それでも8事業が回る。
この記事はKOZUKI(TomorrowProof代表)が執筆しました。
TomorrowProofは、AIエージェントを売る会社ではなく、AIエージェントで経営している会社です。